空き家の放置で固定資産税が6倍に?特別措置法の概要と対応策

2019年09月25日(水)

昨今、全国で深刻化している空き家問題。ニュースでも盛んに報道されていて、活用方法なども議論されていますが、今現在でも空き家はどんどん増え続けています。行政から空き家に認定されてしまったらどうなってしまうのか?空き家を放置したらどんなリスクやデメリットがあるのか? 空き家はどうすればいいのか?考えていきましょう。

全国的に空き家が増加。空き家増加の背景と問題点

総務省統計局が発表している『平成25年住宅・土地統計調査』で、平成25年の住宅総数は6063万戸、そのうち空き家は800万戸、空き家率は13.5%という衝撃的な調査結果が明らかになりました。実に日本の住宅の7軒に1軒は空き家なのです。このままのペースでいけば、2033年には3軒に1軒が空き家になってしまうとも言われています。

空き家が増加している背景

空き家が増加している原因は複数考えられます。まずは大きな社会問題となっている少子高齢化です。単身の高齢者が増え、介護施設や病院に入ることで空き家になってしまうケースが増えています。

家族がいたとしても空き家になってしまうことがあります。子が親の家を相続しても、必ずしも住むとは限りません。多くの場合、すでに子も家を所有しているため、親の家には住まず空き家になってしまうということも多いのです。

また、固定資産税対策として敢えて空き家として放置されているケースもあります。固定資産税には土地に建物が建っている場合、土地の面積200㎡までの分については6分の1に軽減されるという特例があるのです。逆に言えば更地にしてしまうと固定資産税が6倍に跳ね上がってしまうので、空き家をそのままにしている場合もあります。

以上のような理由で空き家が増え続けているのですが、そもそも空き家を売却したり利用したりすることができればこれほど問題にはならなかったでしょう。空き家になる家は築年数も古く、買い手が見つかりにくいです。特に道路に接していない再建築不可物件は建て替えができないため、そのままにしておくか更地にするしかありません。更地にするにも解体費用がかかり、さらに前述のように固定資産税も6倍となります。引き取り手が見つからず、解体もできずに空き家になっているというケースも相当数あると考えられます。

空き家が問題となる理由

空き家が存在することは地域社会に大きな影響を与えます。景観や衛生環境、治安の悪化、倒壊事故や火災の発生など、さまざまな問題が発生することが考えられます。空き家が増えれば増え続けるほど、地域社会が抱えるリスクも大きくなります。

全国の市区町村で「空き家条例」が制定されている

行政も空き家の増加を、手を拱いて見ているわけではありません。全国の市区町村で空き家条例が制定されています。たとえば東京都渋谷区では2000年に「渋谷区安全・安心でやさしいまちづくり条例」が施行され、空き家の所有者に対して適正に管理するよう勧告をできるようになりました。足立区でも「足立区老朽家屋等の適正管理に関する条例」が2011年に施行され、同様に空き家の所有者に対する勧告ができるようになったのです。

新宿区では「新宿区空き家等の適正管理に関する条例」が2013年に施行され、空き家の所有者に対する勧告だけでなく、より強制力がある命令や、所有者の公表、さらには行政が強制的にゴミの撤去や家屋の解体などを行う行政代執行ができるようになりました。品川区でも2015年に「品川区空き家等の適正管理等に関する条例」が施行。勧告、命令、公表、行政代執行が可能となりました。

このように、行政も空き家対策に向けて本腰を入れはじめているのです。

固定資産税が最大6倍に。特定空き家に対する対策特別措置法

前章のとおり、行政も空き家対策に力を入れてきていますが、国でも2016年に「特定空き家に対する対策特別措置法(空き家特措法)」を施行して空き家対策に乗り出しています。

特定空き家に指定されたらどうなる?

空き家特措法は、行政に立ち入り調査権限をもたせて、倒壊のおそれがあるなど周囲に悪影響を及ぼすと考えられる空き家を「特定空き家」に指定し、撤去や修繕命令、行政代執行を可能にするということを規定している法律です。

また、土地に建物が建っている場合は前述のとおり固定資産税が6分の1になるという特例措置が受けられるのですが、特定空き家に指定されると対象外になってしまうというペナルティが課されてしまいます。つまり、今までと比べて6倍もの固定資産税がかかるということです。

特に再建築不可物件の場合は建て替えができないので、そのまま空き家を残しても6倍、解体して更地にしても6倍というように、八方塞がりの状況に陥ってしまいます。

他にも空き家を放置したら罰金を支払わなければいけない、行政が強制的に解体できる行政代執行がされた場合は解体費用を所有者が負担しなければいけないといったルールも制定されています。空き家の所有者に対する規制が相当強化されていることは念頭に置いておいた方が良いでしょう。

特定空き家はどういった状態だと指定されてしまう?

行政が立ち入り調査を行い、主に以下のような要件に当てはまると特定空き家に指定されてしまいます。

  1. 倒壊等著しく保安上危険となるおそれがある状態
  2. 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  3. 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

つまり、周辺の住民の安全や地域社会の環境に明らかに悪影響を及ぼしている状態だと特定空き家に指定される可能性があるということです。

建物が老朽化していて傾いている、ゴミが放置されていて悪臭を放っている、建物に落書きがされている、不審者が出入りしているといった状態の空き家は特定空き家に指定される可能性が高いです。

空き家を所持し続けることのリスクやデメリット

それでは空き家を所有し続けることで、どんなリスクやデメリットがあるのでしょうか?それぞれ考えていきましょう。

空き家をそのまま放置した場合

前章のとおり、特定空き家に指定されてしまうと固定資産税が大幅に上がってしまったり、罰金が課せられたり、行政代執行で必要となった解体費用の請求がなされたりという金銭的な損失を負うこととなります。

また、特定空き家に指定されなくても適切に管理されていないことによって建物が倒壊する、周辺の環境を悪化させる、放火被害に遭う、犯罪者が出入りして治安を悪化させるといったリスクが常につきまとうことになるでしょう。

仮に空き家が原因で事故が起きて人が死傷したり、放火などの犯罪が起きて周辺住民が被害を被ったりすると、所有者が損害賠償責任を負わなければいけないということにもなりかねません。

空き家を修繕し維持した場合

空き家を修繕して維持し続ける場合、当然修繕費用がかかります。固定資産税も支払い続けなければいけません。また、建物は老朽化すればするほど売りにくくなります。月日が経つにつれてますます売れなくなってしまい、老朽化が進んで修繕費もかかるようになる。そんな負のスパイラルに陥ってしまうケースも少なくありません。

空き家の処分は早ければ早いほどおすすめ。空き家への対策方法

負の遺産となってしまった空き家対策としてとるべき選択肢は以下の2つです。

売却するなら買取業者へ相談をする

空き家を売却するなら1日でも早く手放しましょう。古ければ古いほど資産価値が下がって売りにくくなります。不動産仲介業者を利用すると、売却までに時間がかかる可能性が高く、時間をかけても買い手が見つからないということもあり得ます。

空き家の場合は不動産の買取業者に依頼するほうが確実です。査定から売却まですぐに対応してくれます。

売却しないなら、賃貸を選択肢に

売却しないなら賃貸物件として人に貸すことを考えましょう。再建築不可物件でもリフォームは可能です。内装をきれいにすれば不動産としての価値も上がって入居希望者が見つかる可能性もあります。また、近年では古民家を利用したお店の人気が高まっているので、法人や個人事業主などに貸すという手もあります。

いずれにせよ、空き家を放置しておくメリットはありません。放っておけばおくほど、問題も大きくなります。空き家を所有しているのなら、早急に対策を考えましょう。

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