再建築不可物件を民泊として活用するには?【旅館業・住宅宿泊事業法(民泊新法)・特区民泊】

2019年12月27日(金)

外国人観光客が増加している近年、民泊事業が注目されています。空き家を民泊として活用する事例も多くありますが、再建築不可物件を民泊として活用することはできるのでしょうか?法律的に何らかの条件をクリアする必要があるのでしょうか?

今回は再建築不可物件を民泊として活用したいと考えられている方のために、注意すべきポイントを解説します。

再建築不可物件は民泊として活用できる?

結論から言うと、再建築不可物件を民泊として活用することは可能です。ただし、民泊を運営するためには住宅宿泊事業法や旅館業法といった法律で定められている規制をクリアする必要があります。また、当然ながら再建築不可物件は建築基準法上で縛りがあり、民泊として活用するにあたっても増改築などが制限されています。
許可をとる際には消防設備が必要であり、区によって基準がことなります。また、観光地付近などは人気であり需要が見込めます。

建築基準法の範囲内でリフォームや消防設備の設置を行い、住宅宿泊事業法や旅館業法に則って運営をすれば民泊事業が可能となります。今まで利用できていなかった再建築不可物件を民泊として活用することで、利益をもたらしてくれるようになるかもしれません。

そもそも民泊とはどういうものを指すのか

「民泊」という言葉はニュースなどで盛んに聞かれるようになりましたが、そもそもどのような施設なのかご存知ですか?

3つの民泊の種類

民泊には「特区民泊」「旅館業としての民泊(簡易宿所営業)」「住宅宿泊事業法(民泊新法)での民泊」という3つに分類されます。それぞれの特徴について見ていきましょう。

特区民泊

国家戦略特別区域法に基づいて運営される民泊です。外国人観光客が増加した2013年に成立した法律で、特区内に限っては民泊に関する規制が大幅に緩和され、自治体が独自に民泊に関する条例を定めることができます。

東京都、神奈川県、宮城県仙台市、新潟県新潟市、千葉県成田市、愛知県、大阪府、兵庫県、京都府、福岡県福岡市、福岡県北九州市などが特区に指定されていて、それらの自治体が定める民泊条例に基づいて開業・運営されている民泊が特区民泊と呼ばれるのです。

旅館業としての民泊(簡易宿所営業)

従来、ホテルや旅館などの宿泊施設は旅館業法に基づいて運営されてきました。この法律のなかの「簡易宿所営業」の要件を満たしている民泊を指します。

「床面積33㎡以上」「適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること」といった条件を満たしている必要があります。

ちなみに、カプセルホテルや民宿、スポーツなどの合宿場なども簡易宿所営業に該当します。

住宅宿泊事業法(民泊新法)での民泊

住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)の基準に則った民泊です。住宅を宿泊施設として利用することを認めた法律で、2018年6月に施行されました。

住宅宿泊事業法第一条

この法律は、我が国における観光旅客の宿泊をめぐる状況に鑑み、住宅宿泊事業を営む者に係る届出制度並びに住宅宿泊管理業を営む者及び住宅宿泊仲介業を営む者に係る登録制度を設ける等の措置を講ずることにより、これらの事業を営む者の業務の適正な運営を確保しつつ、国内外からの観光旅客の宿泊に対する需要に的確に対応してこれらの者の来訪及び滞在を促進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の発展に寄与することを目的とする。

一軒家やマンション、アパートなどを活用した民泊がこれに該当します。そのなかでも以下のような2種類に分けられます。

*家主居住型(ホームステイ型)

家主が宿泊者と同一の建物内に寝泊まりして管理する方式の民泊です。今住んでいる自宅の一室を民泊として活用するといったスタイルがこれにあたります。

*家主不在型

家主が宿泊せず、民泊施設管理者が民泊を管理している方式の民泊です。自宅とは別の不動産を宿泊者に民泊として提供するスタイルが該当します。

それぞれ3種類の民泊の比較

民泊の形態を3種類紹介しましたが、それぞれ行政への手続きの方法や営業できる日数、宿泊できる日数の上限などが異なります。わかりやすく表にまとめてみましょう。

特区民泊 旅館業 住宅宿泊事業法
行政への手続き 事業者が手続きを行い、自治体から認定を受ける 事業者が手続きを行い、自治体から許可を取得しなければいけない 事業者が手続きを行い、届出を自治体に提出するだけで良い
営業日数上限 なし なし 180日
宿泊日数上限 2泊3日以上 なし なし
建物用途 住宅、長屋、共同住宅 ホテル、旅館 住宅、長屋、共同住宅、寄宿舎
住居専用地域での営業 不可 不可 一部可(条例で禁止されている場合もある)

形態によって開業に関する手続きや運営方法が異なりますのでご注意ください。関連する法律をしっかり理解し、要件を把握しておく必要があります。

再建築不可物件は、基本的に住宅宿泊事業法(民泊新法)での営業となる

旅館業として旅館やホテルを開業する場合、建物の用途が「特殊建築物」である必要があります。
特殊建築物の定義は建築基準法第2条2項に定められています。

建築基準法 第二条二

特殊建築物 学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。

この特殊建築物に対しては、自治体の条例において建築基準法よりもさらに厳しい接道義務が定められているケースがほとんど。例えば東京都では以下のように定められています。

東京都建築安全条例(道路に接する部分の長さ)

第二条の三  特殊建築物の敷地は、その用途に供する部分の床面積の合計に応じて、次の表に掲げる長さ以上道路(前条の規定の適用を受ける特殊建築物の敷地にあつては、同条の規定により接しなければならない道路)に接しなければならない。

特殊建築物の用途に供する部分の床面積の合計 長さ
五百平方メートル以下のもの 四メートル
五百平方メートルを超え、千平方メートル以下のもの 六メートル
千平方メートルを超え、二千平方メートル以下のもの 八メートル
二千平方メートルを超えるもの 十メートル

建築基準法の接道義務は2mなので、いかに厳しい条件であるかがおわかりいただけるかと思います。

他の自治体でも同様の条例が定められていることが多いので、再建築不可物件をホテルや旅館として活用することは難しいと言わざるを得ません。そのため、基本的に再建築不可物件での民泊利用は住宅宿泊事業法に基づいて行うことになります。

民泊を運営するにあたり確認しておきたいポイント

再建築不可物件を民泊として活用する際には、さまざまな条件をクリアしなければいけません。特に以下のようなポイントには注意しましょう。

営業日数は1年間で180日まで

住宅宿泊事業法第2条3項では1年間の営業日数の上限が180日と定められています。

住宅宿泊事業法 第二条三

この法律において「住宅宿泊事業」とは、旅館業法(昭和二十三年法律第百三十八号)第三条の二第一項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が一年間で百八十日を超えないものをいう。

こうした規制が敷かれる背景には、あくまでこの法律に則って運営されている民泊の用途が「住宅」であることが挙げられます。仮に182日以上にしてしまうと1年の半分以上が宿泊施設として使われることになるため、用途が「旅館」や「ホテル」とみることもでき、旅館業法との整合性が取れなくなってしまいます。

住宅宿泊事業法では建物の用途を「住宅」という扱いにして規制緩和を図るのが大前提ですので、こうした規制を設けているのです。

住宅としての家屋の設備があるかどうか

住宅宿泊事業法で民泊を開業するためには建物が「住宅」でなければいけません。台所や洗面設備、浴室、トイレなど、生活をするために必要な設備がひと通り揃っていることが条件です。

住宅宿泊事業法 第二条一

当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定める設備が設けられていること。

キッチンもお風呂もトイレもない。ただ寝るだけの空間では、民泊としては認められないのです。

衛生面・安全面への配慮

民泊を運営するためには宿泊者が安全に、快適に過ごせるようにする必要があります。また、近隣の住民に配慮することも重要です。定期的な清掃、非常照明器具や火災報知器、避難経路の表示などの設置なども義務付けられています。

住宅宿泊事業法 第五条

住宅宿泊事業者は、届出住宅について、各居室(住宅宿泊事業の用に供するものに限る。第十一条第一項第一号において同じ。)の床面積に応じた宿泊者数の制限、定期的な清掃その他の宿泊者の衛生の確保を図るために必要な措置であって厚生労働省令で定めるものを講じなければならない。

第六条

住宅宿泊事業者は、届出住宅について、非常用照明器具の設置、避難経路の表示その他の火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置であって国土交通省令で定めるものを講じなければならない。

各自治体の条例・規制

他にも自治体ごとに条例や規制が定められていて、これに則って民泊を運営しなければいけません。たとえば住宅街である東京都世田谷区では、周辺住民の平穏な生活を守ることを目的に、住居専用地域で営業できるのは土曜日の正午から月曜日の正午までとする規制を敷いています。

また渋谷区では、住居専用地域・文教地区において以下の期間の営業が認められていません。

  • 4月5日から7月20日まで
  • 8月29日から10月の第2月曜日の前の週の水曜日まで
  • 10月の第2月曜日の前の週の土曜日から12月25日まで
  • 1月7日から3月25日まで

子どもが安心して安全に生活できる環境を確保するとともに、国内外からの観光客との文化交流を促進する結果このようなルールが作られました。

民泊を開業する際には、住宅宿泊事業法だけでなく各自治体の条例や規制にも注意する必要があります。

再建築不可物件の売却・活用ならお任せ下さい!

再建築不可物件を民泊として活用すれば利益が得られる可能性もありますが、超えなければいけないハードルが高いのも事実。リフォームやリノベーションを行う、あるいは要件を満たすために設備を導入する必要もあり、売却してしまったほうが良い場合もあります。

東京土地開発株式会社なら再建築不可物件も買取可能です。不動産としての活用ノウハウがあるから、好条件での取引も実現できます。再建築不可の活用でお悩みなら、ぜひ私たちにご相談ください。

  |  

お問い合わせはこちら
不動産業者・仲介業者様へ
不動産売却・買取コラム

相続物件

対応エリア

東京都23区/武蔵野市/
三鷹市/立川市/神奈川/
埼玉/千葉

再建築不可物件、相続物件、任意売却に関する査定申し込みはこちら!最短翌日に査定結果をご報告いたします!