共有名義の不動産とは?共有不動産の売買でよくあるトラブル例と解決方法
複数の人が所有している状態にある共有不動産。売買する際にはさまざまなトラブルが起こる可能性があります。今回は共有不動産の問題で困っている方必見。どんなトラブルが発生するのか?それを解決するためにはどうすれば良いのか?事例を交えながら解説します。
共有不動産とは?
共有不動産とは複数の人が所有権を保有している不動産のことを指します。たとえば自宅の1/2を夫のAさん、残りを妻のBさんが所有しているというような状態です。これはあくまで所有権の割合であって、「どこの部分を所有する」ということが決められているものではありません。共有されている所有権は「共有持分」と呼ばれます。
では、なぜ共有不動産が生じるのか?その理由はさまざまです。多いものとして夫婦共同名義で家やマンションを買って住宅ローンを一緒に返していくケースや、親子で資金を出し合って不動産を購入したケース、相続などが発生して兄弟で実家や土地を公平に相続したケースなどが挙げられます。
共有不動産では共有者にそれぞれどのような権利がある?
共有不動産は当然のことながら、所有者一人ひとりにその物件を活用する権利が認められます。具体的にどんなことができて、どんなことができないのか、見ていきましょう。
共有の土地に建物を建てることはできる?
民法249条に共有物の使用に関する規定が定められていて、共有不動産の使用についてもこれが原則となります。
民法249条(共有物の使用)
各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
あくまで共有持分の範囲のみ使用できるのであって、その範囲を超えた独占的・排他的な使用は認められません。共有している土地に共有者の同意を得ないまま建物を建てる行為は独占的な使用とみなされ、他の共有者の権利を害する違法行為となる危険性があります。
共有者の一人だけが居住している場合、建物の明渡しは請求できる?
たとえば、他の共有者が一人だけ自宅に住んでいて、それを一方的に明け渡させることは原則として認められません。たとえ共有持分の割合が少なかったとしても、前述のとおり持分に応じて不動産を使用する権限を有しているからです。
過去に最高裁でも少数持分権者(持分の価格が共有物の価格の半数に満たない者)であっても明け渡しを求める際には、理由を主張して立証しなければいけないという判例が出ています。
共有不動産の管理費用や税金は誰が支払う?
不動産を維持するためには固定資産税や都市計画税などの税金、管理費や修繕費などの経費を支払う必要があります。共有不動産の場合は、民法253条1項で持分に応じて負担するように定められています。
民法253条(共有物に関する負担)
1.共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
たとえば、3人兄弟がそれぞれ1/3ずつ共同所有している自宅を修繕し、120万の費用がかかったとしましょう。この場合はそれぞれが修繕費の1/3である40万円ずつ負担しなければいけません。
不動産の共有を解消する方法
共有不動産売買時のトラブルを未然に防ぐためには、共有状態にある不動産を分割することが効果的です。その方法として、以下の3つが挙げられます。
また共有物が通路や私道になっているケースは多くありますが、そのような共有状態の通路の分割は基本的に認められていないため、注意が必要です。
現物分割
土地などの共有財産を物理的に分ける方法です。たとえば、3人兄弟が1/3ずつ土地の所有権をもっている場合、分筆登記(単一の土地を複数に分割して再登記すること)を行い三等分し、それぞれの土地を各人が単独所有するようにします。
換価分割
共有不動産を全部売却してしまい、その売却代金を共有者に持分に応じて分配する方法です。3人兄弟が1/3ずつ共同所有している不動産が3,000万円で売れたとしましょう。この場合、それぞれが1,000万円ずつ受け取れます。特に建物は土地のように物理的に分割することが難しいので、換価分割が有効です。
代償分割
共有物の一部を特定の共有者がすべて取得して、他の共有者に対して共有持分の価値に相当する代償金を支払う手段です。他の共有者から共有持分を買い取るというイメージが近いかもしれません。先ほどの3兄弟の例で考えてみましょう。3,000万円分の価値がある不動産を長男が取得した場合、その1/3である1,000万円を代償金として弟2人に渡します。
共有不動産の分割は原則として当事者同士が協議をして決めますが、揉めた場合は裁判所に分割請求することも可能です。
民法第258条(共有物の分割)
1.共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2.前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
裁判所では原則として物理的に分割できる共有不動産の場合は現物分割、できない場合や分割したことで価値を大きく損なう場合は換価分割を命じるケースが多いです。
特定の共有者に取得されることが相当であり、代償金の額が適正かつ支払う資力が取得者にある場合にのみ代償分割が認められます。特定の共有者に取得させることが相当であると認められるか否かは、共有物の性質や形状、共有不動産の利用状況、分割された場合の経済的価値などが考慮して決められます。
共有不動産の売買についてのトラブル例と解決方法
共有不動産を売買する際にはどんなトラブルが起きうるのでしょうか?よくある実例と、その解決方法を紹介します。
共有者の一人と連絡が取れなくなってしまうケース
共有者が失踪したり、病気や死亡したりして連絡が取れなくなってしまうケースがあります。この場合でも共有持分の売却は各共有者が自由にできて、持分に相当する買取金額を買主が支払います。
共有不動産の全部を売買する場合、共有者全員の同意が必要なのは前述のとおりですが、特定の共有者と連絡が取れなくなってしまった場合は裁判所に申し立てることで、その共有者の持分を処分することも可能です。
「共有不動産すべてを売却する」契約をしたのにも関わらず、共有者の一人が移転しないケース
一旦は売却に合意したものの、その後特定の共有者が反故にするというケースも多々あります。この場合は売買時に契約不履行時の特約が定められているかどうかで大きく結果が異なります。例えば以下のような特約が売買契約書に盛り込まれていれば、違約金の請求は可能です。また、契約を反故にした場合の措置を売主に対して明確に説明しておくことで契約不履行を未然に防ぐことができます。
第A条 第●条に定める本物件の所有権移転登記手続き及び引き渡しの義務は一体不可分の債務であり、売主らが買主らに対して、一括して履行するものとする
第B条 売主の一人が第●条に定める本物件の所有権移転登記手続き及び引き渡しの義務の履行を怠り、買主が売主の一人に対して相当期間を定めて催告してもなお履行されない場合は、買主は売主の一人に通知することで、本件売買契約全部を解除することができるものとする。この場合、売主らは買主に対し、違約金支払債務を連帯して履行するものとする。
第C条 第B条により、本契約が解除されたときは、売主らは連帯して、買主に対し、第●条に定める、手付金を無利息にて返還するものとする。
もちろん、契約書に違約金の特例が記載されていないと泣き寝入りになってしまう可能性が高くなります。
法定相続分を超える取得と対抗要件(民法改正)
共有不動産が発生する要因で多いのが相続。遺産分割協議の場で共有持分の割合や売却について揉めることも少なくありません。よくありがちなのが、遺産分割や遺言によって法定相続分と異なる権利を取得するケースです。これに関連した民法899条が平成30年に改正されたのでご紹介します。
法定相続分とは民法で定められた各相続人の取り分です。「法定」という名前がついてはいますが、あくまで目安。遺言のほうが効力は強くなります。これまでは法定相続分を超えた権利を取得した場合、登記手続きなどを行わなくても遺言などによって権利を主張することができました。しかし、法改正後はこうした主張が通用しなくなったのです。
民法899条の2(共同相続における権利の承継の対抗要件)
1.相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条(法定相続分)及び第901条(代襲相続人の相続分)の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない。
つまり、いくら遺産分割や遺言があったとしても、実際に登記や登録といった手続きがなされていなければ、「これは相続したものです」「自分のものです」として主張できないというわけです。
法律の解釈の相違によってトラブルが発生する場合もありますので、しっかりと理解しておきましょう。
共有不動産の問題解決なら、ご相談ください
権利関係が複雑な共有不動産はどうしてもトラブルが発生しがちです。しかし、事前に分割などの対策を講じておくことでスムーズに売買できる可能性が高くなります。
東京土地開発株式会社では共有不動産、共有持分の買取を行っています。「共有者と揉めている」「共有者と連絡が取れなくなってしまった」というケースでも問題を解決し、売却いただいた事例が数多くございます。豊富な経験とノウハウをもとに、他の不動産会社では売れなかった物件も、弊社なら好条件での買取が可能です。共有不動産のトラブルにお困りでしたら、東京土地開発株式会社にご相談ください。
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