再建築不可物件の相隣関係について。持分がなくても隣地の通行・掘削は可能?

2019年12月27日(金)

再建築不可物件、とりわけ袋地や私道に面した物件はライフライン工事やリフォーム工事を行う際に、工事業者の出入りや掘削工事などで隣地を使っても良いのかどうなのか判断に悩むところです。

今回は工事や通行などで隣の土地や私道を使えるのか否か?使えるとしたらどんなケースが挙げられるのか?解説します。

他人の所有する土地に接している場合、その土地は利用できるのか

結論から述べますと、隣接する土地の所有権を有しているかどうかで変わります。それぞれのケースを見ていきましょう。

持分が1%でもあれば使用可能

土地を一人だけでなく複数の人が所有権を保有しているケースもあります。また、特に私道などは近隣の複数の住民が所有権を保有して近所の人が自由に行き来できるような状態にしているケースも多いです。1%でも持ち分を保有しているのであれば、通行や掘削工事を行うことは可能です。

ただし、法務省が発行している『複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書~所有者不明私道への対応ガイドライン~』によると、「保存」を目的とした内容のみ、独断で行えるとしています。これは民法252条が根拠となっています。

第二百五十二条(共有物の管理)

共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

また、こちらの条文で書かれているとおり、「管理」を目的とした工事などに関しては共有者の過半数の同意が必要となります。

「保存」と「管理」の違い

前述の『複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書~所有者不明私道への対応ガイドライン~』では、私道の現状を維持するための行為を「保存」、私道の状態をより良くするための行為を「管理」としています。

たとえば私道が災害などで損傷して通行が不可能になってしまった際に、それを補修して通行できるような状態にするために行う工事は保存行為と言えます。未舗装の私道を「車が揺れるから」「土埃が舞うから」という理由でアスファルト舗装するようなケースは状態をより良くするための行為と言えるので、管理とみなされるでしょう。

持ち分がない場合は?

私道や土地の所有権を保有していない場合は、所有者と通行・掘削承諾書を取り交わす必要があります。所有権がない土地や私道を勝手に通行したり、掘削工事を行ったりすることはできません。

通行・掘削承諾書とは

通行承諾書は私道を通行することを認める旨が記された書類、掘削承諾書とは上下水道や都市ガスなどの引き込み工事のために土地を掘削することを認める旨が記された書類です。

これらの承諾書がないとライフラインやリフォーム工事を行う際にローンが利用できない、土地を通行したり掘削したりする際にいちいち承諾を得なければいけないといったデメリットが生じるので、なるべく取り交わすようにしましょう。

ご自身で所有者と話をして承諾書に署名押印をしてもらうこともできますし、不動産会社や測量会社に依頼して代理で取り交わしてもらうことも可能です。

通行・掘削に承諾してもらえない場合の対処法

通行・掘削承諾書を土地の所有者のところに持っていったとしても、何らかの理由で通行や掘削に承諾してもらえないケースも考えられます。誠心誠意相手と話して認めてもらえることもあれば、頑なに拒絶される場合もあるでしょう。正当な事由があるのにも関わらず、承諾を得られなかった場合には裁判を起こして相手方に承諾請求を行うことも可能です。

たとえば、水道法11条では他人の土地を使用しなければ下水や公共下水道に流入させることが困難な場合は他人の土地を使うことができる旨が定められていますので、下水道の整備工事を行う際にはこれを根拠として承諾を請求することができます。

第十一条(排水に関する受忍義務等)

前条第一項の規定により排水設備を設置しなければならない者は、他人の土地又は排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難であるときは、他人の土地に排水設備を設置し、又は他人の設置した排水設備を使用することができる。この場合においては、他人の土地又は排水設備にとつて最も損害の少い場所又は箇所及び方法を選ばなければならない。

民法209条では、境界やその付近で建造や修繕をする際に隣地の使用を請求できることを、210条では他の土地を通らないと道路(公道)に出られない場合は、その土地を通行できる旨が認められています。

第二百九条(隣地の使用請求)

土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
2 前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

第二百十条(公道に至るための他の土地の通行権)

他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖がけがあって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

民法220条、221条は通水に関する規定ですが、これにも他人の土地の利用に関する条文が記されています。

第二百二十条(排水のための低地の通水)

高地の所有者は、その高地が浸水した場合にこれを乾かすため、又は自家用若しくは農工業用の余水を排出するため、公の水流又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることができる。この場合においては、低地のために損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない。

第二百二十一条(通水用工作物の使用)

土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる。
2 前項の場合には、他人の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。

このように、実はさまざまな法律で他人の土地や私道の利用に関するルールが定められており、これらを根拠として通行・掘削の承諾請求を行うことができるのです。

仮に承諾なしで工事や通行などを行うと損害賠償責任を問われるリスクもあります。もちろん話し合いによってスムーズに承諾を得られるのが一番理想的ですが、上下水道の工事を行うために掘削を行う必要があるなど、正当な事由があれば裁判所を通じて請求をすることもできることを念頭に置いておいてください。

袋地における隣地の通行権について

たとえば自分の土地が他の土地(囲繞地・いにょうち)に囲まれている状態の土地、いわゆる袋地の場合、隣の土地を通行することができるのでしょうか?

囲繞地を通行することは可能

結論から述べると、袋地の所有者は囲繞地を通行することが法律的に認められています。先ほど挙げた民法210条がその根拠です。「囲繞地通行権」としてご存知の方もいらっしゃるかもしれません。もう一度条文を見てみましょう。

第二百十条(公道に至るための他の土地の通行権)

他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖がけがあって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

ただし、無料で通行できるわけではありません。民法212条には償金(通行料)を支払う必要があると定められています。ちなみに償金は都度支払うことも、一年分まとめて払うことも可能です。

第二百十二条

第二百十条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。

さらに、民法213条では分割によって袋地ができた場合は償金なしで通行することができる旨定められています。

第二百十三条

分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

第二百十四条(自然水流に対する妨害の禁止)

土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。
(水流の障害の除去)

要するに、袋地の所有者は公道に出るために囲繞地を通行することは可能ですが、償金(通行料)を囲繞地の所有者に支払わなければいけません。ただし、もともとひとつだった土地を分割したことで袋地ができた場合は、他の分割者の所有地のみを無償で通行ができるということです。

通行権の範囲はどこまで?

基本的に囲繞地を通行できる権利は袋地の所有者のみがもっています。しかし、「何がなんでも袋地の所有権を持っている人だけしか通行を認めない」というのは非現実的。日常生活に支障をきたす恐れがあります。

実際には袋地の所有者の家族、袋地にある住宅に手紙や荷物を届ける配達人、友人や知人などの訪問客、リフォーム会社の作業員なども含まれるという判例が出ています。

あくまで通行権は袋地の所有者のみにしかありませんが、それだけでは生活に支障が出るため袋地に用事がある人も通行を認めましょうという拡大解釈がなされるのが一般的です。

通行・掘削承諾書のない物件の売却もご相談下さい

再建築不可物件のなかでも、とくに袋地や私道に囲まれた物件はリフォームやインフラ工事がしづらく、活用も容易ではありません。一般的な不動産会社に売ろうとしても断られる、あるいは二束三文の査定額しかつかない可能性もあります。

東京土地開発株式会社は再建築不可物件に特化した不動産買取会社で、袋地であっても好条件での売却が可能です。通行・掘削承諾書がなくて扱いに困っている物件に関しても買取可能ですので、お気軽にご相談ください。

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